貯蓄率の正しい計算方法 — 「なんとなく節約した」を数字で検証する
「今月は抑えたはずなのに、なぜか口座残高が増えていない」
家計簿をつけている人が一度は感じる違和感だ。外食を減らして、衝動買いも我慢した。それでも月末になると期待より手元が少ない。
この感覚のズレの原因のひとつは、貯蓄の成果を数字ではなく「感覚」で判断しているからだ。
貯蓄率は、月ごとの財務的な進捗を測る最もシンプルで正直な指標だ。これを毎月記録していないと、家計の改善が進んでいるのか後退しているのか、判断が難しくなる。
貯蓄率の計算式
貯蓄率(%)= 貯蓄額 ÷ 税引後収入 × 100
たとえば税引後の月収が30万円で、今月5万円を貯蓄・投資したなら、貯蓄率は16.7%になる。
シンプルに見えるが、実際に計算してみると二つの落とし穴がある。
落とし穴①:収入の基準が曖昧になっている
税引前の額面給与を使って計算する人は、実態より低い貯蓄率が出てしまう。必ず税引後の手取り収入を基準にすること。副業収入や臨時収入がある場合も、それらを含めた総手取りが分母になる。
落とし穴②:「貯蓄」の範囲が狭すぎる
現金の預貯金だけを貯蓄と考えている人が多い。だが以下のものも貯蓄・投資として含めるべきだ。
| 項目 | 含める? | 備考 |
|---|---|---|
| 普通預金・定期預金への積立 | ✅ 含める | 満期前解約口座も積立時点で計上 |
| IRP(個人型退職年金)掛金 | ✅ 含める | 韓国の税優遇付き退職年金制度 |
| 청약저축(住宅購入積立) | ✅ 含める | 韓国特有の住宅取得向け積立制度 |
| ETF・インデックスファンドの積立 | ✅ 含める(元本のみ) | 含み損益は除く |
| ISA拠出額 | ✅ 含める | 非課税投資口座 |
| クレジットカード分割払いの元本返済 | ⚠️ 負債返済 | 貯蓄とは別に管理 |
| 生活費として使った出費 | ❌ 除く | これは消費 |
IRPや自動引落しの積立投資は、給与から自動的に引かれるため「使っていない感」が薄く、見落としがちだ。これらを含めると、実際の貯蓄率は思ったより高いことが多い。
韓国の平均貯蓄率はどのくらいか
本アプリ「잔고(jango)」は韓国発のサービスのため、韓国のデータを参照する。
韓国統計庁(통계청)の2024年「家計動向調査」によると、2人以上世帯の月平均可処分所得は約467万ウォン(2026年6月時点の為替レートで約51万円前後)、そのうち黒字額(貯蓄可能額)は約120万ウォン程度。ここから算出される**平均貯蓄率はおよそ25〜26%**だ。
ただしこれは平均値であり、所得階層によって差は大きい。低所得層ではほぼ貯蓄余力がない一方、高所得層では35〜40%を超えることもある。
OECD統計(2023年)では、韓国の家計純貯蓄率は可処分所得比で約10〜12%とされており、OECD平均(約7〜8%)を上回る。統計庁の調査と数値が異なるのは、集計方法の違いによるものだ。
FIREムーブメント(経済的自立・早期リタイア)では、以下のような目安がよく参照される。
- 20%:長期資産形成の最低ライン
- 30%:平均より明確に速いペースで資産が積み上がる
- 50%以上:積極的。経済的自立までの期間を大幅に短縮できる
正解はひとつではない。固定費の重さや収入水準、目標によって適切な数字は変わる。
月次で測ることが大切な理由
年に一度まとめて貯蓄率を振り返っても、あまり意味がない。大切なのは月ごとのトレンドだ。
- 3ヶ月連続で貯蓄率が下がっている → 支出の伸びが収入の伸びを上回っているサイン
- ある月だけ急落した → 旅行・家電購入など一時的な出費の影響。過剰反応しなくてよい
- 昇給後も貯蓄率が変わらない → 「生活水準インフレ(Lifestyle Inflation)」が起きている可能性
月別の数字を記録し、3〜6ヶ月の移動平均で見ると、ノイズを除いた本当のトレンドが見えてくる。
複式簿記で貯蓄率をきれいに追跡する
一般的な収支管理アプリには、貯蓄率の計算に向いていない構造的な問題がある。預金口座への振替を「支出」として記録してしまうため、その月の支出が過大に見えてしまうのだ。
複式簿記では、積立の振替をこのように記録する。
借方:積立預金(資産) +50万ウォン
貸方:普通預金(資産) −50万ウォン
支出は一切発生していない。お金の「形」が変わっただけだ。この方法により、損益計算書(収入−支出=純利益)と貸借対照表(資産の増減)が明確に分離される。
実務的な活用法はシンプルだ。
- 月初:全口座の残高合計 → A
- 月末:全口座の残高合計 → B
- B − A = 純資産の増加額 = 実質貯蓄額
- 貯蓄率 = 実質貯蓄額 ÷ 税引後総収入 × 100
投資口座は含み損益を除き、拠出元本ベースで管理するのがポイントだ。
貯蓄率が低いときに確認すべきこと
すべての変動費を削ろうとする前に、まず二つを確認してほしい。
① 固定費が手取りの40%を超えていないか
家賃・保険料・サブスクリプション・ローン返済など、固定的な支出が税引後収入の40%を超えると、どれだけ節約しても貯蓄に回せる余地が限られる。この場合、変動費の削減より固定費の見直しが先だ。不要なサブスクの解約、保険の特約見直しなどが効果的だ。
② 高金利の負債が貯蓄を圧迫していないか
負債の返済は、貯蓄と同様に純資産を増やす効果がある。ただし利息は純粋な損失だ。高金利の消費者ローンやクレジットカードのリボ払い残高がある場合、先に高金利負債を返済してから貯蓄を増やすのが、数字的に合理的な順序だ。
今すぐ計算してみよう
3つの数字、2分でできる。
- 税引後月収:___万円(または___万ウォン)
- 今月の貯蓄・投資合計(預貯金+IRP+積立投資の元本):___
- 貯蓄率:____%
もし数字が予想と大きくズレていたなら、それは重要なシグナルだ。月末の「なんとなく」を、毎月の記録に変えよう。